想像は、とても単純な発想に基づいている。それは、すでに達成しかけている自分の姿を思い描ければ、達成するのがずっとやさしくなるという発想だ。精神科医のレジーナ・パリーは、こんなふうに言い表している。
神経科学によれば、出来事が起こりもしないうちから、脳はすでに何が一番起こりやすいか予測を済ませており、予測されるものに最適な知覚や行動、情動、生理的反応、対人関係の処理を発動させている。ある意味で、私たちは過去から学んだことに基づいて未来を予測し、それから、自分が予期する未来を生きているのだ。
あるいは、マイケル・ジョーダンに言わせれば、「物事は、自分ができるようになる前に、自分にはできると期待しなければならない」
サーチ!p.221,222
自分の望む未来を想像する事で実現が近付くという発想は、精神世界の分野では「引き寄せの法則」と呼ばれている物に近い。想像の過程で、自分自身の中にある内面の障壁を取り除く事も行うようだ。
より具体的には、自分の夢が実現している場面の緻密な視覚化を行う事になるが、視覚化は誰にでも出来る方法ではない。更に、何でもとりあえず想像すれば良いわけではなく、視覚系統の知能が高い必要がある。
古き良き知能検査であるWAISーⅢでは、知覚統合は絵画完成、積木模様、行列推理の三要素から成る。ただ想像する方法が上手くいく為には、この内、絵画完成が高い事が前提となると考えている。
(絵画完成が優秀な前提で)視覚化の能力が高ければ、想像する過程は自分の望む未来をより明確に理解する事に繋がるが、望む未来を「引き寄せられる」わけではなく、偶然目の前に訪れる機会に気付きやすくなると言った方が正確だろう。
更に一歩進んで、自分の未来を具体的に言葉にして書き出す作業はとても有用である。成功した学者や運動選手などは、割と小さい頃から明確な将来の展望を持っている事が多く、その事を周知させる為に文章として伝える過程を経ている事が多い。
勿論、精神状態を良好にする事も有益ではあるが、この辺はどちらかというと既に夢が叶っていて、更にパフォーマンスを上げたい場合に対処する事柄になってくるのではないか。
簡単に纏めると、①右脳(表象系)で想像する事で理想の未来を自分が理解して、②左脳(言語系)で具体化する事で理想の未来を周囲に理解させる、それだけだ。