しかし、宗教学者の櫻井義秀が『霊と金』で指摘するように、「貧困ビジネス」と化すものもあります。経済的な効率という市場社会の基準が支配し、そうした風潮の中で、経済的な弱者からひとときの心の慰安と引き換えに多額の金銭を受け取ることを良しとする傾向は、「スピリチュアル」な世界にも浸透しているのです。その結果、安易な救いへの依存や、「内面」への追求のみが至上価値となり、現代社会が抱える諸課題や世界に対して「どのように働きかけていくべきか」が真摯に問われる場ではなくなっているのです。
インテグラル理論入門Ⅱp.158
上記の引用は、現代のスピリチュアリストが陥りがちな姿勢を示していると言える。一方で、学問的な視点においては、スピリチュアリストに対応する職業の体表的な例として、セラピストが挙げられる。
科学的なセラピストの治療目標は、「経済的なやりくりが可能であり、心理的にも適度なストレスに耐えられるような、ライフスタイルと職業を確立する事」となるそうだ。
日本のセラピストは基本的に、唯物思想に侵されている精神医学の監督の下で治療を行う為、生理的に健康な状態を保つ事が重視される。
例えば、気分が塞ぎ込んでいるクライアントの脳内のセロトニンの量を調節する為に抗うつ薬が処方されたり、幻覚や妄想が見えるクライアントの脳内のドーパミンの量を調節する為に統合失調症薬が処方されたりする。
セラピストに与えられる役割は、医師が正しい所見を出す為に必要な臨床心理的な分析結果を提供する事と、形式だけの心理療法と権威的な生活介入を行う事だけである。
こうした状況下では、実際にクライアントが抱えている問題の背景は無視されていると言える。何でもかんでも対症療法でやってしまうのは、現代医学全般の弊害である。それだけでなく、薬の副作用で再起不能になる事も有り得る。
そして、大多数の人は精神病者のレッテルなど貼られたら堪らないのであって、よりマイルドな方法を模索する事になる。その結果が、費用対効果の薄いスピリチュアルビジネスの流行である。
もう一度確認すると、科学的なセラピストに求められる結果は、以下の通りである。
①生理的な健康、②心理的な健康、③経済的な健全、④政治的な健全。
①は、正式なセラピストの教育を受ければ身に付くが、独学も可能。
②は、まさにスピリチュアルな人達が掲げている数々の心の法則に対応している。
③は、精神医学の分野では新しいが、生活臨床と呼ばれる視点が分かりやすい。
④は、原因に対する結果が正しく反映される事が担保されている状況を意味する。
私は、スピリチュアリストの理想は、科学的なセラピストの条件を全て満たした上で、更にその先を目指す事だと考えている。
読者の皆も、最強のスピリチュアリストを目指して研鑽に励んでもらいたい。