〈世界空間と指示の特定〉
実在に適合した統合的なポスト形而上学の成立のためには、以下の二つの要件を満たすことが必要です。
インテグラル理論入門Ⅱｐ．１１１
①統合的なポスト形而上学の「世界空間(worldspace)」を特定すること。つまり、四象限間の相関および対立関係の検討などを通じて、統合的なポスト形而上学の世界空間を探します（存在論的要件）。
②まず「指示（命令injunction)」の特定をすること。そして旧来の形而上学の再検証と新しい内容の検証によって、本物の「観想の知」を獲得、集積による統合的なポスト形而上学の構築を図ります（認識論的要件）。
インテグラル理論では、古き良きプラトニズムの流れを汲む宇宙論の概観復習に始まり、ホロンを基盤とする新しい存在論を導入した後に、四象限に八視座を加えた真・善・美をバランスよく観察する認識論を詳論する。
その上で、伝統的な宇宙論も今まで通り尊重しつつも、視点による観念の側面の切り抜きという立場から、他にも様々な現実の捉え方の方法があると考えて、新しいポスト形而上学の在り方の総合的な検証を行っている。
まず、世界空間の特定では、インテグラルの発達段階（レベル）を用いて議論の対象になっている理論が、どのレベルの信念に基づいているのかの分析と適切な解釈を目指す、専ら理論読解の領域に属するテーマとなる。
一方で、指示の特定では、議論の対象となる理論を更に発展させる為に必要な過程、即ち信頼に足る知識であると判断する為に必要となる前提を、経験的事実、知的整合性、共感可能性の３点の絡み合わせとして考える。
精神世界の理論は、玉石混淆であるし好みがはっきりと反映されるところだが、少なくとも売れている物に関しては、実用的な解釈の余地が必ずあるので、荒唐無稽であると切り捨てる前に一度吟味する方が無難である。
