より深くリアリティを体験し、人間の意識と知識をより素晴らしいものに進化させていくためには、インテグラルなアプローチとして、基本的な三つのステップが必要とされます。このアプローチは、一つの原則から導かれるものです。それは、リアリティについてそれぞれの知が述べていることは、その分野の妥当性の基準を満たしたものである限り、「すべては正しい、ただし部分的には」となるという原則です。そして、以下の三つの段階を踏んでいきます。
①あらゆるものを尊重、包括、排除しない(非排除)
②そうして得られたより包括的視点から、今現在のリアリティに対しどれが適切な方法かを見極める(展開)
③それらの方法を使って、リアリティに実際に働きかける(生成)その結果、また新たに現象が生じ、リアリティも変容していきます。そして新たなリアリティを把握するために、①から③の工程をまた繰り返していくのです。
インテグラル理論入門Ⅱp.64
前回はホロン存在論について検討したので、今回は(ホロン?)認識論について検討する。最新(2010年だが)のインテグラル理論では、四象限に内側と外側(≒部分と全体)の視座がそれぞれ加わって、四象限八視座となっている。
前回のホロン存在論の発展形のように外側をZ軸正、内側をZ軸負、に取れば相似形の三次元座標系に還元出来て分かりやすいんだが、一応本書の枠組みに従って考える事にする。
例(認識論):
ゾーン1(主観単数内側)…現象学
神秘的な体験のみに限らない通常の認識論の観点から言えば、目の前で起こる出来事に対してどのような情動を選択するかについて、自分なりの工夫を凝らす事で成長を試みる分野だと言える。(私見)
ゾーン2(主観単数外側)…構造主義
やはり神秘的な体験のみに限らずに考えると、自分が経験した出来事について言語化し類型化する事で、認知的に試行錯誤を行って直接情動を把握経験する事無く成長を試みる分野だと言える。(私見)
ゾーン3(主観複数内側)…解釈学
普通の国語(小説系)の問題を解くのと同じ。
ゾーン4(主観複数外側)…ポスト構造主義
同上(評論系)。
ゾーン5(客観単数内側)…オートポイエーシス
ゾーン1の考え方を自己流の具体的な採点基準を用いて評価する技術。
ゾーン6(客観単数外側)…粗大還元主義
ゾーン2の考え方を自己流の具体的な採点基準を用いて評価する技術。
ゾーン7(客観複数内側)…社会的オートポイエーシス
普通の国語(小説系)の問題を採点するのと同じ。
ゾーン8(客観複数外側)…微細還元主義
同上(評論系)。
ちょっと単純化しすぎたきらいがあるが、要するに成長の方法は一つでないという事である。現在の科学的な基準は主にゾーン6の考え方で、具体的にはEQといった概念として結実していると言える(自己流の部分には疑問を持つ人も居るかもしれないが)。
見れば分かるように、ゾーンの内の半分は純粋な国語能力の問題となっているので、国語が苦手な人は不利である。だが、私の経験から言わせてもらえれば、いずれかのゾーンで高い水準に到達出来れば、
一芸に秀でる者は多芸に通ず的な流れで他のゾーンの習熟度も徐々に上がってくる。そういう意味では、逆に国語の学力を強化する目的で神秘主義的な見方を応用する事も不可能ではないのかもしれない。
各ゾーンの具体例は必ずしも自身の成長に活かせる直接的な内容を持っているわけではないが、通底する実践知を形にする為の技術を身に付ける訓練の機会と捉えると、腑に落ちるのではないだろうか。
重要なのは、全ての理論に長所と短所がある事を理解して、自分の理論がどの類型に対応しているかをきちんと理解した上で更に、全く別の種類の方法がある事や複眼的な観点がある事を知っておく事だと言える。
いずれかの方法論の基本を身に付けるだけでも、少々のオカルト結社くらいなら簡単に作れてしまうんじゃないだろうか。一糸乱れぬ集団行動が出来れば、奇跡が起きる事もあるかもしれない。