ウィルバーは、インテグラル段階の発想の特徴を次のように簡潔にまとめます。
インテグラル段階とは「誰もが正しく、また部分的である」ことを認識する意識構造である。
インテグラル段階とは、世界に存在する多様な世界観や価値観が、ある特定の文脈のなかで、そこで生活する人びとの生存を可能とするための叡智の結晶として生みだされてきたものであることを認識する段階です。しかし、インテグラル段階の意識構造は、また、常に、「いま、ここ」に開かれています。それは、世界というものが刻々と変化しているということを、そしてそうした変化が、しばしば過去に存在した文脈のなかで創出された叡智を時代遅れのものとしてしまうことを知悉しているのです。そして、まさに世界の流動性に開かれたそうした視野こそがインテグラル段階の意識構造に過去の遺産を批判的・建設的に継承することを可能とするのです。つまり、刻々と変化する時代の文脈のなかで、それまでに確立・練磨されてきた世界観や価値観を柔軟に再構築しながら継承することができるのです。
インテグラル理論入門Ⅰp.186,187
書店のスピリチュアル本のコーナーなんかに行って並んでいる本を手に取ると、皆がそれぞれ独自の宇宙論を掲げていて、全く全然違う宇宙的存在(神様)が出てきて、信仰の対象となっている。構造的には共通点もあるのかもしれないが、一致団結という風にはいかないだろう。
表面的にどんな内容であっても、著者が能力者であれば参考にはなるし、導きも御利益も、ある程度得られる印象はある。そういう意味では、実利だけを重んじるのであれば、八百万の神々のように様々な存在が乱立していても良いのかもしれない。
とはいえ、教えの部分も実践しやすく一般化しやすい内容である事に越した事はないし、お互いに支え合っていく上では、水と油の状態ではままならない。自分の心を慰める為のつまみ食いのスイーツから、自己を支えるメインディッシュにまで昇格させる為にも、何らかの総合的な枠組みが求められている。
上述のように、インテグラル理論はあらゆる思想を包括的に分類・整理しつつ、それらが持つ本質的な叡智を抽出して再び息を吹き込む世界初の普遍哲学である。また、インテグラル理論は次元の異なる様々な持論を掲げる人達にとって、互いに理解・共感し、対話を行う為の土台となる基礎を提供するものである。即ち、共通言語基盤としての役割を果たしうる。