序論=遺伝子ワクチンは安全なのか
ワクチンと言えば、通常は生ワクチンや不活化ワクチンなどの事を指す。従来のワクチンは一般に、開発に時間がかかる上、大量生産する事も難しい。
一方で、新型コロナではmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)やウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ)などの、遺伝子ワクチンと呼ばれる新しい種類のワクチンが開発された。
日本でも治療に用いられているが、治験段階にある為、長期の安全性が実証されていない。
コロナウイルスの構造とワクチン
さて、まずはコロナウイルスの構造について見ていこう。
コロナウイルスに限らず、ウイルスは以下の4つの主要なタンパク質から構成されている。
エンベロープタンパク質…ウイルスと外界を隔てるタンパク質
膜タンパク質…エンベロープ上の扉タンパク質
ヌクレオカプシドタンパク質…ウイルスの遺伝子とその殻からなるタンパク質
スパイクタンパク質…ウイルスが体細胞侵入時に使うタンパク質
通常の自然感染では、上記4つのタンパク質の全てに対する抗体が産生される。一方で、コロナワクチンはスパイクタンパク質の遺伝子情報のみを持つ為、免疫応答によりスパイクタンパク質に対する抗体のみが産生される。
ウイルス全体を闘牛に喩えるならば、闘牛の「角」のみが再現されたようなものである(笑)。
スパイクタンパク質とワクチン
では、なぜスパイクタンパク質のみを産生するのか。それは、ウイルスの感染機序に関わる問題である。スパイクタンパク質が無ければ、ウイルスは体細胞内に侵入する事が出来ない。
スパイクタンパク質は体細胞への「鍵」の役割をしている。体細胞にある「扉」である受容体を騙して、細胞内に侵入してしまうわけである。そこで、「鍵」の部分だけ無力化してしまおうという発想が、コロナウイルスに対する遺伝子ワクチン全般の根底にある。
免疫の種類とワクチン
人間の免疫は、大きく2種類に大別される。
自然免疫…生まれつき備わった免疫の仕組みで、病原体を非自己と認識して働く。
獲得免疫…過去に感染した病原体を記憶する事で、再感染時に効率的に撃退する。
更に、獲得免疫は細胞性免疫と液性免疫に大別される。
細胞性免疫…免疫細胞が直接病原体を攻撃する。
液性免疫…抗体を利用して病原体を無力化する。
ウイルスによる感染症は感染そのものより免疫応答の方が主だった症状として出てくる場合が殆どだと言われている。ワクチンの機序を正しく理解して、免疫のどの部分に影響した結果、どのような症状が出現しうるのかを把握せねばならない。
抗体の種類とワクチン
液性免疫による抗体は5種類存在する。
IgG抗体…全抗体の70〜75%を占め、体内に侵入した病原菌を無力化する。
IgA抗体…全抗体の10〜15%を占め、体内に病原菌が侵入するのを防ぐ。
IgM抗体…全抗体の10%を占め、感染初期に産生される。
IgE抗体…全抗体の1%以下で、アレルギー反応に関与している。
IgD抗体…全抗体の0.001%以下で、詳しい役割は分かっていない。
一般的には、抗体と言えばIgG抗体の事を指す。コロナワクチンでも、スパイクタンパク質に対するIgG抗体の産生を到達点としている。